区の地域住民も利用する小学校の体育館の建替えである。閑静な住宅街に手狭となり老朽化した既存体育館は日影上、既存不適格建築物となっていたため、高さを抑えなければならない。
にもかかわらず、学校側は今よりも広く大きく、高くを要望していた。空間は内に大きく外に小さくと相反する要求である。
まず、逆日影によりアリーナの大屋根は無駄な部分を削り落とし、おだやかな曲面のヴォールト状にした。アリーナの両側には舞台ゾーンと事務所、エントランスをそれぞれ配置しフラットな陸屋根とし高さを抑えた。
上部構造は屋根架構を2対の交差アーチとし、交差部の下に束柱を設けタイロッドと呼ばれる引張材を通した張弦梁を採用した。大屋根は従来のトラス構造のような圧迫感が抑えられ、開放的な空間が拡がった。
一方下部構造は4本のY字柱で支えることとし、その先端にプレストレスを導入した梁で繋ぎ安定させた。また、柱を途中より内側に折曲げることにより内部に邪魔な柱型が出ないすっきりと安全な体育館を実現させた。
柱を折曲げる構造的効果として、アーチのスラストと屋根の鉛直反力を相殺させ、柱の曲げ応力を減少させる事が可能となった。
柱形状は応力状態に従い、素直に根元を太く先端を細くした。その結果、構造体は無駄の無いシャープな形状が残り、ファサードにその姿が映し出されている。