アッと目を引く建物としたい。ダイオーズ創業者の熱い想いである。
ダイオーズは、クリーンケア商品のレンタルからスタートし、日本で初めてのオフィスコーヒーサービスなどの事業を展開する企業である。
三ノ輪の事務所を拡張し、既存建物をボトルウォーターの工場に改修を行い、その製品をストックする倉庫を1階に事務所を2階に配置する新築計画が始まった。
この計画はダイオーズ創業50周年記念事業として行い、建物は周辺に対して目立つ広告塔としての機能を取り入れることが求められた。
敷地はJR常磐線が目の前に走る宣伝効果としては打って付けの好立地である。
建物は事務所棟とエントランス棟に分離し空中の渡り廊下で連結する平面計画とした。事務所棟の正面壁面には緩やかな曲面に大画面の液晶ディスプレイを取り付け、商品等を実写しアピールすることとした。
エントランス棟はコーヒーカップをモチーフにエレベーターと階段で構成されている。
中央にシースルーエレベーターを配置しその周囲に廻り階段を設け屋上に抜ける動線とした。その階段動線がダイオーズのロゴであるDマークの一筆書きに近似しているため、平面形状をロゴと完全に一致させ屋上にDマーク看板を取り付けることとした。
敷地周辺環境の課題としては古くからの住宅の密集地域であり日影規制がかかる高度地区となっており、南側のJR常磐線の騒音が激しい。対処方法としては事務所棟2階のベランダの壁を屋根まで立ち上げ音の軽減を図ることとした。遮蔽する壁により南からの採光が取れなくなり暗く圧迫された空間は、両サイドにガラスブロックを配置し屋根からは円形状のトップライトを設け自然光を確保した。
このトップライトは屋上から見るとダイオーズカーの水玉デザインとなっており、イスとして青空ミーティングにも利用できるオリジナルデザインとなっている。
一方、エントランス棟については南側に厚い曲面壁を巡らすことで遮音し、ランダム配置のガラスブロックにより柔らかい光を取り入れた。ランダムのガラスブロックはダイオーズのカタカナ文字をデザインアレンジメントしている。
地震に対しての配慮として、事務所棟の耐震安全性能は一般の官公庁施設と同等の最高ランクのⅢ類としている。エントランス棟は上に広がる特殊形状で吹き抜けの多い空間となっているため、地震の変形に対しエネルギー吸収能力の高い制振部材オクトブレースを採用した。この制振ブレースの特徴は損傷を制振ブレースに集中することで万が一の建物の倒壊を防ぎ、建物の安全を図っている。アルミ材の八角形形状はスケルトンデザインのエントランス棟に融け込んでいる。